Product Features
パワーアンプTBP-Zero の音は、従来のプリアンプを使用した場合でさえ、CDやアナログレコードなど各種の録音ソースに「思っていたよりも、ずっと多くの情報が入っている」ということを再認識させるものでした。TBC-Zeroは、TBP-Zeroのこうした特性を更に追求すべく設計されており、両者を組み合わせた音は録音ソースの本質に迫るものと言えるでしょう。とりわけ付帯音(滲み)の少なさ、無帰還アンプとしては類まれなエネルギー感、そして非常に高い聴感上のS/N比は、これまでのアンプでは体験できなかったレベルに達しています。
TBP-Zero 、TBC-Zero はこうしたサウンドを、モジュレーション(電気信号のゆらぎ)を可能な限り排除することによって実現しました。電気信号のゆらぎを減らすことで、聴感上の「音の出方」が「生の音の出方」に近づき、音量とは無関係な「音のエネルギー感」として伝わるのだと考えられます。
開発コンセプト
テクニカルブレーンZero シリーズの開発における中心コンセプトは「一切の色付けや、意図的な音作りを排除する」こと、「従来のアンプに残されていた問題点を徹底的に排除する」ことです。パワー・プリを問わずアンプから最終的に出てくる音(音声信号)は、入力信号がアンプの増幅回路内を通過する間に受ける電気的モジュレーション(動的な回路の非直線性・電源ノイズ等による変調)と機械的モジュレーション(内部・外部振動による変調)を受けています。テクニカルブレーンではこうしたモジュレーションが音の「滲み」を引き起こし、自然音と比べた場合に直感的な不自然さを感じさせると考えています。
残念ながら現在のところ「音の滲み」の大小を示す測定法は無く、一般的な周波数特性や歪率といった測定値とも全く相関性がありません。「滲み」に限らず電気的特性と音質との間にはあまり相関の無いことは広く知られています。ところが、電気的な測定値は現在でも多くのアンプ設計において、非常に重要視される傾向にあります。
例えば、一般的な測定法によるアンプのS/N比(入力換算雑音)は理論的に増幅回路の初段のS/Nで決まってしまいます。したがって、S/N比のみ注目した設計を行うと、初段の素子を低雑音の動作領域で使用し、かつ増幅度を大きく取ることになります。結果として、初段の動作電流は少なく、負荷抵抗は大きめの値となります。
このように設計されたアンプは確かに低雑音アンプではありますが、これらが高音質であるかに関しては大きな疑問が残ります。電流を少なく、負荷抵抗を大きく取るというのは、増幅回路内インピーダンスを高くすることになります。しかしながら、これは電気信号がモジュレーションを受けやすくなることを意味するのです。
TBC-Zero の開発においては、従来の設計法による各増幅素子の動作点(電流値・抵抗値)に対して徹底的な再検討を加えました。その結果、増幅回路の各素子に流す電流値を大きくして、抵抗値は低くする低インピーダンス回路を採用し、入力信号のモジュレーションを可能な限り排除しています。これにより、一般的な電気的測定値では従来の設計法によるアンプと同等、または多少劣る場合があるにも関わらず、聴感上のS/N比の良さ、付帯音(音の滲み)の少なさを実使用時に明確に感じられる音質を実現しました。
完全無帰還アンプ
以前にも何機種かの良く出来た無帰還方式のプリアンプは存在しましたが、そのほとんどに共通する音のイメージは「繊細で非常にきれいな音はするがエネルギー感に乏しい」といったものでした。音の繊細さは、従来の負帰還に起因するモジュレーションの影響が排除された事による効果といえます。しかしながら、①アンプの基本設計が電気的特性の計測値を重視していたこと、②負帰還方式を使用したアンプの特長である、アンプ内外部の変動に対する圧縮効果が無いこと、③電源電圧の変動・応答に対する圧縮効果が少なく、電源の質(動的な安定度・応答)の影響が非常に大きいこと、といった複合的要因が従来の無帰還アンプの弱点になっていたと考えられます。
TBC-Zero はこうした無帰還アンプの問題点を回避するため、パワーアンプ並の大型電解コンデンサ(50V15000μF×4)を用いた左右独立電源回路、各ステージに充分な電流を流し低インピーダンス化された増幅回路を採用しています。また出力回路段にはパワーアンプ TBP-Zeroにも使用されている本質的に出力インピーダンスが低いエミッタ抵抗レス出力段を導入した、完全無帰還アンプです。
プリアンプの場合にはドライブの対象がパワーアンプ(入力インピーダンス)とケーブルである事から、パワーアンプほど本質的な低インピーダンス化は必要ないとも考えられます。しかしながら、プリアンプにおいてでも、多量の負帰還によって見かけ上の出力インピーダンスを下げたものと、本質的な低インピーダンス回路(少量の負帰還または無帰還によるもの)を採用したものとでは、実使用時における動的なドライブ能力、そして音質に大きな差があります。確かに、負帰還は出力インピーダンスを下げる手段として効果的な方法の1つである事は間違いありませんが、使用方法によってはモジュレーションの要因となり得るのです。
完全DC化
テクニカルブレーンでは時間軸方向のモジュレーションも音質に大きく関与していると考え、これを排除するためパワーアンプ TBP-Zero を完全DCアンプとしました。それに従い、TBC-Zero も完全DCアンプとして開発されました。
しかしながら、無帰還アンプ回路には基本的に周囲温度変化・電源変動などに対する圧縮効果があまり期待できません(無帰還アンプ回路で安定度重視設計を行うとモジュレーション要因が増加するため)。そのため負帰還(NFB)を使用した回路と比較して、安定度が取りにくくなってしまいます。
従来の無帰還プリアンプは、出力のDCオフセット電圧の発生を抑えるため、音声信号に関しては帰還ループを持たないかわりに、DCのみ100%帰還とするか、またはDCサーボ帰還回路を使用することによって安定度を確保していました。しかし、これまでの一般的なDC100%帰還、DCサーボ方式では、その時定数に関わらず、完全DCほどリニアな伝送・増幅(周波数特性、位相特性)は達成できませんでした。
確かに、従来のDCサーボ方式によって聴感上での量感や歯切れの良さ等がかなりの自由にコントロール出来ます。しかし、自由にコントロール出来るということは同時に「音を創っている・色付けを行っている」ことを意味し、Zero シリーズの開発コンセプトに反してしまいます。
そこで、テクニカルブレーンはTBC-Zero を無帰還・完全DCプリアンプとして実現するため、新方式のDCサーボ回路(ディフレンシャル・サ-ボ回路)を開発しました。この方式は、アンプ回路で発生したオフセット電圧のみを検出し、このエラー電圧のみによるサーボ動作を行うというものです。つまり、アンプ入力に入ったDC成分はサーボ動作の対象とならず、そのまま増幅され出力されます。これにより完全にDC増幅が可能になり、当然周波数特性・位相特性も完全にDCまでフラットになります。さらに、このサーボ方式により出力DCオフセット電圧の安定度が確保できるため、定電圧電源回路にもNFBを使用しない(モジュレーション要因の少ない)無帰還方式の電源の採用が可能となりました。
完全DCアンプの音は一聴すると低音が出ていないように感じるかもしれません。しかしながら、暫く聴き込んでいくうちに、音量や単なる量感とは異なるエネルギーを持った低音を聴く(感じる)ことができます。そうなれば、DCサーボアンプの持つ音の不自然さを容易に峻別することができるでしょう。
|